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南アルプス市のジャズ喫茶より日々の出来事を。

by ex-saporterK

猫背なんだもん。

ここのところ「なんかねー、ひとんちの子もかわいく感じるの」が口癖。あれだけ「私は自分が幼少期少年期思春期を通過してきたのも否定したいくらい子供って苦手」と言って憚らなかったのに。母性とは違い愛他欲でも保護欲でもなく、単に精神年齢を下げられるようになっただけ。今日も「かわいいとは違うけど、近所のおばちゃんの気持ち」みたいになって複雑。

ということで雲隠れ。曇って蒸し暑いけどぐずぐずになるほどでもなく、今の時期の中では快適。国立能楽堂とは「たぶん無縁」だと思われる若者がたくさんいて、ハタと「そうかそうか」と気付いた。ジュニア兄の仕舞とジュニア弟の初面があるんだった(最近、事前準備とか何もできなくて、当日番組を確認したりしている有り様)。

思いがけず(というか注文する時に言いそびれたのが災いして)1列目。ドイツ×スウェーデン戦で、ドイツチームの素晴らしいセットプレーに興奮してすっかり寝そびれている。途中で「菜摘女を支配する影としての静御前は、影が動くのにつられて菜摘女が動くのか、あくまで支配している菜摘女が動いてから影として動くのか」という「相舞」の微妙な時差について「これはどっちなのか」判らないでいた。ゆらゆらしているから、どっちが先に動き出しても構わないんだ(ろう)けど。

さてジュニア兄弟の舞台。どうもね、現代っ子ということで片付けていいのか、あの猫背は治したほうが良いな。自信なさそうに見えるし、そもそも見栄えは良くないし、何より「能楽師は背中が命」だと思っているくらい姿勢よくいてもらいたい。これは単に私の願望だけど。緊張のあまり周囲の音も何も聞こえなくなったことがあるけれど、拍子がズレているのを目の当たりにしながら、そういえば舞囃子の稽古で「拍子の踏むタイミングがズレると全てがガタガタになる」と脅されたのを思い出した。2度とも拍子がズレていて、それともああいう拍子だったのだろうか(不勉強故に言い切れない)と首を捻る。

舞台の出来に関しては素人の私が言うことではないので、今後の成長を眺めることにしよう。私はイエスマンでもフォロー人間でもないから、見た瞬間に考えていることは相当辛辣で容赦ない。舞台に立つ以上は玄人だから。見終わってからは何となく「そうはいっても誰しも初回が初めの一歩だし」と差し引きが出て来て、帰り道友達とああだこうだ言う。母性愛が私に芽生えたのなら、ただほのぼの見て終わっただろうけど。

公演後の質疑応答で登場したジュニア弟の出入りも問題。照れ隠しなのかあれが地なのか。「あれはむしろ噺家だな」と、思わず出囃子(なぜか外記猿)が頭の中で流れた。前屈みな姿勢と左右にぶれる歩き方。脚が長いので腰高なのはわかるけど、地に足が着かない歩き方って、緊張しようが何だろうが美しくない。舞台に再登場ではなくて、会場の出口で立っていたほうが(それは能楽師的ではないけれど)、まだマシだったかも。

なんて思うのも、一重に「成長をハラハラと見つめる(気でいる)近所のおばちゃん」気分が沸いているから。まだ私の身長よりずっとぐっと低かった頃から、すっかり追い抜かれるまで数年だったけど、「人のうちの子は大きくなるのが早い」と思う。ジュニアたちは今後、勝手に「近所のおばちゃん気分」に浸っている私のようなのを相手に、舞台を踏まなくてはならない。当然、そういうことだって覚悟の上で決めたんだろうけど。「苦労の池」に今まさに飛び込んだって印象。生き残れ、ジュニア兄弟よ!でもまず猫背を治すところから始めようぜ。
by saporterK | 2006-06-26 03:17