人気ブログランキング | 話題のタグを見る

南アルプス市のジャズ喫茶より日々の出来事を。

by ex-saporterK

絵の鑑賞。

日曜美術館ベストオブベストを途中まで見た。
岡本太郎が、ピカソに感動して、それに従う平伏すのではなく「それを乗り越えなくちゃ」いけないと言ったこと。
高橋義孝が、画家の名前や経歴は見なくていい「まず絵を見なくては、音を聴かなくてはいけない。その後で、あぁこれは前田青邨か、で良い」と言ったこと。ゲーテが、自分の書いた作品から、人々は自分以上のものを読み解くと言ったように、絵もまた作者の思惑に関係なく見るべきだと言う。
谷川俊太郎が、フェルメールの「絵それ自体が官能的」で、「とにかく美しいんだよなぁ」と言ったこと。理路整然な人が呆然とするように手放しで「しぃんと静かな」感動に浸る様子。

私は絵を見るのが大好きだけど、ワインを飲むときと同じく、いつまで経っても詳しくなれない。題名も覚えない。「こんなような名前の人で、こんな構図で、こんなような題名」という曖昧にしか覚えられなかったりする。もちろんお店で売るように、商売が絡むと別だけど、休日によろよろさまよう美術館の中で、血眼になって作者や題名や経歴を読んだりしない。展覧会では、よくブースの入り口に作家の年表や滞在した場所などが書かれたものが掲げられていて、まずそこで人の塊ができる。でも私はスルーしてしまう。好きな絵は好きになるだろうし、好きな作家の絵でも好きになれない絵もある。どこにいて誰と過ごしてどんな絵を描いていても、たぶん関係なく好き嫌いはでてくるから。

そう、高橋翁の言うように、絵を見なくちゃ。好きかどうか。作者の狙いなんていいから、自分がどう感じるか。それは人を見る時と同じだ。学歴とか家柄とかよりも、外見や声や話し振りや話す内容が好きかどうか。絵も人も、良いとわかっていても好きになれない場合もあるし、誰も見向きもしないけど惹かれる場合もある。

周囲の評価に惑わされずに(特に絵は、絵自体より画商の力と時に政治力の利用によって評価がなされる)、自分が好きかどうかで楽しめば良いと思う。画家のことを知らなくても好きかどうかで見るなら、全然敷居は高くないし、どんな展覧会だって高くても1500円も払えば、世界中のあらゆる絵を見られるのだから。そんなお得なお楽しみって、逃す手はない。
by saporterK | 2006-09-18 11:00