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南アルプス市のジャズ喫茶より日々の出来事を。

by ex-saporterK

やはり。

月曜日までだけど、横山大観展観たほうが良いですよぉ、という話。重い図録を買って帰っただけのことはある。図録の色目は実物とだいぶ違うけど、それでも記憶の確認としては良い方だと思う。「行けたらなぁと思ったんだけどねぇ」と仰るお客さん、いや、ほんと、人でくしゃくしゃになっていても、観に行って欲しかったです。足立美術館や国立近代美術館所蔵とかならいつでも観られるけれど、ボストンに行くのを考えたら、人混みで人酔いすることなんて!と、実際に人酔いしたけれど行って良かったと思う私はぐっと拳に力を込めて「ほんっとに、もう、良かったですわー」。

普段なら、せっかく江戸遠征しているのだからと、2・3件の美術館を梯子するのだが、大観展に於いては、よくやるように芸大美術館の常設展を観ることすらせず「この打ち震える感動を薄めてはならぬ」と梯子せずに、食事して帰るほどのことは初めて。日本人であるが故の贔屓目を差し引いても、他の絵を観ないで帰らなくちゃと思える画家が、どれくらいいるだろうか。大観だから無条件に素晴らしいとは思わない。「老子」に描かれた老子は私の琴線には触れなかったし、あやめ(水鏡)は花や着物は目を見開いて凝視したものの水鏡に姿を映す女性そのものには、あまり注視しなかったりもした。展示された中に駄作はひとつもなかったと思うが、自分の感性に響かない要素は数個見つかったりするのだ。それでも、他の展覧会に寄り道しては、感じた「何か」が希釈されそうな気がしたのは間違いない。

そしてその気持ちに共感してもらえたのも嬉しいではないか。その常連さんとは芸術や文学や文化について、私のあやふやな感想を聞いていただける貴重な機会を持てる。私が「柳の葉の描き方が、ゴッホの『郵便局員の肖像』だったか何かで黄緑で描かれたバックの筆遣いみたいで、音声ガイドにもあったように、葉を描くうちに恍惚となるような、日本の柳みたいにサラサラではない、何か蠢くような唸るような枝のうねりと葉の擦れる音が聞こえてきそうなんですよぅ」と捲し立てるだけの感想にも、ほぅほぅと頷いてもらえる。すると私も、自分の中に湧き出た感動を、再び味わい思い出せる。

映画に1800円はなかなか払えないけど、展覧会に同額払うのには何の抵抗感も無い。個人の価値観だが、絵には感動に持続力があると思う。本も同じ。映像が悪いわけではないが、私の中では、映像は解りやすいがゆえに、パンチ力はあるけど持続力の点では、文章や絵にはかなわない気がする。想像力の強みか。
by saporterK | 2008-03-02 01:24