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南アルプス市のジャズ喫茶より日々の出来事を。

by ex-saporterK

夏休み(9月だけど)。

そんなこんなで2日間休んだ。
上野から水戸までの特急、車窓からは山梨とは違う田舎の風景を眺める。土浦では花咲く蓮根畑に仏を思ったり(ピンクの玻璃のような花の美しさといったら!)、実り多い青々とした栗畑に垂涎したり、なぜかサルスベリの林があったりする。周囲に高い山はないので空が広く、あまりに広くて心もとないくらいだった。

会場最寄り駅に降りた途端に香る潮、海辺らしい湿気、松。そんなことをタクシーの運転手のおじさんに話す。お能を見る楽しみについて訊かれ「サッカー観たり、北島三郎のコンサートに行くのと、まぁ同じですねぇ」という答えに至極納得の様子であった。先入観というのは勿体ない存在である。おじさんが今後お能を見るかは別にしても、敷居の高さを排してくれたのなら大きな前進だと思う。

夏休み(9月だけど)。_f0053615_2151630.gif時間があったので、ちょいと海へ出て(といっても神社から道を挟んだ向こう)鳥居を見ようと階段を降りた。ぴったり90段。久遠寺の階段に比べたらよほど楽だ。夕方で且つ曇っていたので、ありがたいというより火サスにでも使われそうなシーンだが、山梨では決して拝めない風景を暫し堪能。波の反復運動を間近にして、時折引き込まれそうに体が揺れてしまう。あぶないあぶない。

日が落ちて夜になり、なかなか厳粛。私の後ろに座った年配の紳士が、穏やかに随分詳しいことを話していた。途中、携帯を鳴らす不届き者がいたのが唯一で、全体として雰囲気が良かった。思っていたより遠かったけど、それだけの意義はあった。普段の雲隠れと同じく「行って帰ってくる」ような感じだったけど、車窓の風景、タクシーのおじさんの茨城言葉、静かな境内、飛び交う虫、水戸ナンバーの車、あちこちで売られる水戸納豆モノ、観光も食べ歩きもできなかったけど、それなりに旅をしてきた。帰りの特急でビールも飲んだし。初めてワンマン電車に乗ったし。東京へ戻って1泊。やはり枕が合わず「眠れんな」と思いながら朝を迎え、そのままいつもの雲隠れ先へ。

行ったことのない土地、乗ったことのない電車。これで食べたことのない物を食べたら完璧な旅。1人で知らない土地をふらふらするのも、無事に終わってみれば楽しいものだ。久しぶりにそんな感慨にふける。そして、家に戻ってきて改めて「あぁ、落ち着く」と思うのだ。これもまた旅の醍醐味締めくくりなのだ。
by saporterK | 2006-09-11 02:36