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南アルプス市のジャズ喫茶より日々の出来事を。

by ex-saporterK

舞台裏は大変。

夕飯の時間に、舞台総監督をチャン・イーモウが、指揮をズービン・メータが導く「トゥーランドット」中国公演のドキュメント映画を放映していた。
マスターはずっと大仰でけったいなため息をつき、欠伸をしつづけていたけど、かまうもんか。先週の「皇帝ペンギン」をつまらないドラマに邪魔された敵討ちだ。

彫りの深いヨーロッパ人の演じる中国人が奇妙に見えるように、きっとアジア人の演じるヨーロッパ人も珍妙に見えるのだろうと思いながら見ていた。私のそんな先入観はともかくとして、絢爛豪華な巨大舞台を作り上げる「裏側」を垣間みる。初日を迎えるまでの、緊張状態の続く日々。それは人間関係にも及んでいる。それぞれの理想、思惑がせめぎ合って譲り合わず主張する。それが弁証法的に向上するのか、逆に下降してしまうかの渡り合い。個々人の主張がお国柄を表していて面白い。

面白いと言えば通訳の存在だ。彼らはこのドキュメントでは全くの黒子扱いだが、以前読んだ田丸公美子「パーネ・アモーレ イタリア語通訳奮闘記」では、通訳は必ずしも一字一句を伝えているわけではなくて、微妙な言い回しや厳しすぎる言葉を、意味を変えないようにして或いは削除して通訳すると言う。映画ゆえに発言は無情にも字幕になっているが「通訳はこの言葉は訳していないだろうな」と思うのがあった。

能力のある人達が集まっているからこそ衝突がある。笑いながらキツい一言が飛び交う。もしかしたら奥には人種の壁があるのかもしれないし、それがなくても自分の意見を通そうとしているのはわかる。本番が近づくにつれて切迫した雰囲気になり、辛うじて均衡が保たれているような感じがするが、そこはそれ、さすが誇り高いプロの集まり。ガラ公演の様子と準備やリハーサルを交差させて「創り上げる」様子がよく出ている。中国語、英語、イタリア語(もしかしたらもっと)があっちへこっちへ行き交い、共通目的達成の為に動いている。言語以上に出身国は多彩だ。ひとつの舞台の中に、世界が凝縮されている。それをまとめているのがプッチーニの「トゥーランドット」なのだ。オペラ歌手、京劇役者、ダンサー、オーケストラ、そして軍人までも出演している。国、職業、あらゆるものの坩堝を見た。

それぞれ主張があるにしても、人種も職業も違うのに、ひとつのものを創り出しまとめられるなら、きっと人間は穏やかに暮らしていけると思いながら見ていた。それはリーアム・ニーソン、ジェレミー・アイアンズ、オーランド・ブルーム出演映画「キングダム・オブ・ヘブン」でも(こちらはキリスト教とイスラム教共存共栄)似たようなことが語られていたのと同じだ。LOVE&PEACE AMORE e PACE
by saporterK | 2006-09-13 22:29